セルゲイ・ロズニツァ『粛清裁判』『アウステルリッツ』

社会主義について書かれた本を主体的に紐解いたことが一度もないまま、イメージフォーラムで上映されている『粛清裁判』の回へ私は急いだ。新型コロナウイルスを警戒し、数ヶ月ぶりの電車では極力人混みを避けられるよう車両を選択し、渋谷から表参道までの…

林美脉子『エフェメラの夜陰』

エフェメラ =ギリシア語が語源で、一度しか存在しえないつかの間ではかないものの意 註 P66 丸善の本棚で出会うまで、私は林美脉子という人の名前すら知らなかった。 このタイトルと、この美しい青い装丁でなければ手に取ることもなかったように思う。 表題…

高原英理『ガール・イン・ザ・ダーク』を読んで

話しておくれ! と私たちは愛ゆえに声を張り上げる。何もかも話しておくれ! そうすれば私たちはお前を許そう、と。だが少女たちは私たちに何もかも話すことなど望んでいない、一言だって聞いてもらうことを望んでいない。要するに彼女たちは、見えないまま…

ウォン・カーウァイ監督『花様年華』

ル・シネマで特集をやっているから全部観る!という記事をあげておきながら、結局『天使の涙』しか観ることができず悔しい思いをしていたのだが、なんと!ル・シネマにてアンコール上映!!やっていたのだ!!! 情報を手にいれて30分以内に渋谷へ移動して…

『クエイ兄弟―ファントム・ミュージアム』展(渋谷区立松濤美術館)

クエイ兄弟の名前を知ったのは、おそらく今年に入ってから。神奈川での展示が終わった頃で、見逃してしまったことをとても悔やんでいたが、なんと、都内でも6月6日から始まると知って、ずっと楽しみに待っていた。 ちなみに行ったのは9日の金曜日。金曜日は…

ウォン・カーウァイ特集『天使の涙』

『メットガラ』でゴルチエがウォン・カーウァイ監督に言及している部分があると聞き、この監督の作品に興味を持っていたところ、Bunkamura ル・シネマで特集として過去の4作品を上映するという素敵なニュースが! <『メットガラ ドレスをまとった美術館』公…

北川健次写真展

LIBRAIRIE6さんにてフライヤーを見かけ、とても気になって、暑さにも負けず水天宮前のギャラリーサンカイビさんへ。 最終日に間に合って良かった…… お写真やオブジェ、エッチングが展示されており、作品の本だけでなく、与謝蕪村と西洋美術との繋がりについ…

オリエント工業40周年記念展「今と昔の愛人形」

SPIN GALLERYの「八月のアリス」展で初めて目にし、『LOVE DOLL×SHINOYAMA KISHIN』の写真展でその魅力に溺れた、オリエント工業のドール。 もっと知りたいと思っていたので、アツコバルーのオリエント工業展で学びを深めてきた。 年表を背景に、いくつかピ…

「夢の植物園」展

恵比寿のギャラリー、LIBRAIRIE6へ行ってきた。 「夢の植物園」の名の通り、植物をモチーフにしたコラージュ・絵画・オブジェ・写真などが展示されていた。 この世のどこにもきっと存在しないが、この世のどこかに存在してほしいと願ってしまう、素敵な植物…

『四谷シモン ベルメールへの旅』菅原多喜夫 著

2010年に、ポーランドで開催された『四谷シモンと友人たち 日本におけるベルメール展』に、展覧会の企画に関わり、学芸員として四谷シモンに同行した菅原多喜夫によって記された旅の記録。 成田空港出発から、モスクワ、そしてワルシャワ、カトヴィツェ…

『迷路の旅人』倉橋由美子 著

『わたしのなかのかれへ』に続いて出された、倉橋由美子の第2エッセイ集。 名前が某魔法少女な子どもたちの育児の合間を縫って書かれた、主に文学についての文章たちである。 倉橋さんの文章に触れようと購入したため、「玉突き台の上の文学――John Updikeの…

とてつもなく美しいものに出会ったとき、私はふわっと宙に浮く。 普段世俗的なことをして時間に縛られているこの身体から魂が解放され、普遍的で時間を持たないものの集まるところへ飛んでいく。 そこでは「私」は存在しなくなる。 消えてしまえる喜び。 映…