『迷路の旅人』倉橋由美子 著
『わたしのなかのかれへ』に続いて出された、倉橋由美子の第2エッセイ集。
名前が某魔法少女な子どもたちの育児の合間を縫って書かれた、主に文学についての文章たちである。
倉橋さんの文章に触れようと購入したため、「玉突き台の上の文学――John UpdikeのCouplesについて」や、「評伝的解説――島尾敏雄」などはさらっと流してしまった。アップダイクの文章は、アップダイクを読んだ後に読み返そう。島尾(以下同文)。埴谷(以下同文)。
「沖縄に行った話」は、真っ先に読んだ。
普通の食べ物ということなら、例えば沖縄そばがある。(中略)澄んだスープに蒸し豚がはいっている。この豚は豚であることをほとんど感じさせないもので、ほとんど味も匂いもないのが本当の美味を感じさせる。こういう洗練は、豚に関してはこれにまさるものを知らない。
本当かな?
今まで暴言しか吐かれたことないよ?
一番好きだなあと思ったのは「やさしさについて」。
「やさしさ」という「もっとも女性的な」「美徳に恵まれていることにかけては誰にもひけをとらない」(らしい)やさしいやさしい倉橋さんが、「ノー」を使わない「やさしさ」について書いた、2段組みにして6ページ弱のやさしいエッセイである。
何と言っても、オチが素敵。やさしい。